家探しの前に必要なのは「片付け」だった!
多くの人は家探しや家づくりを始めるとき、まずは住宅展示場や不動産サイトをチェックします。
素敵な間取りや最新のインテリアに心惹かれ、「1FにランドリーとWICが欲しい」「1階完結型がいい」など、夢は膨らみますよね。
けれど、意外とみんなやっていない、とっても大切なことがあります。
それが 片付け=物量の把握 です。
「え?片付けなんて住んでからでいいでしょ?」と思うかもしれません。
しかし、もし片付けをするかどうかで、 間取り・コスト・暮らしやすさ が変わってしまうとしたらどうでしょう。
なぜ片付けが家づくりに影響するのか
①コストに直結する
物が多ければ収納スペースが増え、収納が増えれば延床面積も増えます。
結果として、建築費用・ローン返済総額が跳ね上がることに。
②間取りのミスマッチを防ぐ
「とにかく収納多め!」と伝えるより、
「家族の衣類は1人〇〇cm位あればOK」など具体的に伝えられれば、設計士は無駄のない間取りを提案できますし、間取りをご自分のモノサシでチェックすることが可能になります。
③引っ越しのストレスを大幅に減らせる
片付けせずに引っ越すと、「段ボールがそのまま、数年放置」という事態になりがち。また、持ち物の種類とその量を把握しておけば物の住所が決められます。つまり、行き場を失った物達を仮置き&放置するというリスクを回避できます。
AさんとBさんの家づくり比較
ここで実際に、片付けをして物の量を把握したAさんと、しないまま家づくりを始めたBさんの違いを見てみましょう。
設定
AさんBさん家族は共に4人家族(夫婦、5歳と3歳のこども)
間取りの要望はほぼ同じ
大きく違うのは物の量とその把握状況
【共通する希望】
・1階:LDK+水回り
・2階:個室3部屋+書斎+納戸
・駐車スペース:普通車1台+予備1台
Aさんの希望(稼働していない物は処分&物量把握済)
玄関の収納:靴は1人8足程度+ゴルフセット1つと、サッカーボール等のおもちゃ、工具、食材宅配用の保冷BOXと処分するまでの段ボール置場が欲しい。
衣類 : 1人幅100cm程あればOK。ファミリークローゼットでも個室収納でもどちらでも。ただ、それとは別に冬用のアウター用収納を1階の玄関付近に欲しい。
キッチンは幅120cmの食器棚があれば足りるが、それ以外にストック食材と分別ダストボックスが入る収納が欲しい。
納戸:季節用品(扇風機・ファインヒーター、布団等)の収納、こどもの作品や書類等。
こども用品:幅90cmの棚を2つ置きたい(大きくなったら撤去)。
脱衣室に家族分の下着と部屋着、タオルを置きたい。
リビングには文房具や鞄がしまえる収納が欲しい。
Bさんの希望(物に溢れて生活&物量把握はどんぶり)
玄関の収納はSIC(今、玄関がごちゃごちゃしているから物を沢山しまえるように)
1階にランドリールームが欲しい。
リビングにはこども用のおもちゃをしまえる収納が欲しい。
2階にはWIC(服が多い)
こども部屋にもクローゼット収納が欲しい。
脱衣所広めで、洗面台と分けて欲しい。
できればパントリーが欲しい。
Aさん家族の場合:土地と間取り
38坪の土地を購入。
2階建て延べ床面積28坪の建物を建築。
Bさん家族の場合:土地と間取り
45坪の土地を購入。
2階建て延べ床面積35坪の建物を建築。
単純比較すると…
Aさん(4人家族・片付けてから計画)
- 土地代金:2300万円
- 本体価格:2800万円
- 借入額 :5100万円(諸費用・外構その他は現金で支払い)
- 返済総額(金利1.0%・35年・元利均等):6000万円
Bさん(4人家族・片付けせず収納多め希望)
- 土地代金:2700万円
- 本体価格:3500万円
- 借入額 :6200万円(諸費用・外構その他は現金で支払い)
- 返済総額(金利1.0%・35年・元利均等):7300万円
差額はなんと1300万円!
「現状の物量(稼働していない物も含む)に合わせて理想を叶えた」結果、Aさんと比べるとBさんは1300万円多く家に投資したことになります。
『Bさんは1300万円を物の為に使った』
とは言いません。必要な物の量は人によって違いますし。少ないから良いというわけでもありません。けれどもし、Bさんの持ち物の内の数割が『必要ない物』だったとしたら、どうでしょうか?
『必要ない物』が紛れていたせいで、建物費用が100万円でも、いえ50万円でも変わっていたとしたら…。
もし気付かないうちに不用品の為に数十万円かけてスペースを用意していたとしたら。
『勿体ない!』って思いますよね。
実際にあったこんな話
こんなことがありました。
間取りが大方決まってきた時です。『できれば小屋裏収納を作りたい』とお客様がおっしゃいました。そこで営業が見積りを出しました。『30万円で小屋裏収納が追加できます』
30万円と聞いて、ご夫婦は唸りながら悩み始めました。あまりに悩まれるので気になって聞いてみたのです。
『小屋裏に何をしまわれる予定なのですか?』
そうしたら、教えてくれました。『こどものお下がりの服を保管したい』と。
お客様のご家族は3人の小さなお子様がいらっしゃいます。そのうち男の子ふたりと女の子ひとり、長男のお下がりを次男にとっておきたい、そんなお話でした。
お客様との信頼関係が出来ていたこともあって、私もついぽろっと思ったことを呟いてしまいました。
『30万円かけてお下がりを保管するより、30万円かけて新品を買った方が良い…んじゃ?』
『……』
『ほんとだわ!!』
一瞬の沈黙のうち、ご夫婦で大笑いされて、小屋裏収納は無しになりました。
設計士の本音:「収納は多め」より「収納の持ち方」
さて、設計の立場からしても、「できるだけ収納を多く!」よりも、具体的に物の量を教えてもらった方が助かります。上に書いたBさんの希望、一見しっかり伝えられているようには感じますが、どうでしょう、実際にどれくらいのスペースが必要なのか、希望を読んで正確に当てる自信はありますか?
逆にAさんのように、
- 家族のクローゼットは一人幅100cmあればOK
- コート用のクローゼットは玄関付近に
- 脱衣所には下着・部屋着・タオルを収納したい
- 玄関のSICには段ボールやゴルフセット、子どもの遊び道具を置きたい
- 季節用品は、扇風機1台と冬用布団家族分と節句のお飾りなど
こんな風に要望を伝えれば、設計者も間取りを描きやすい上に、ご自身で「収納が足りるかどうか」を判断しやすくなります。また逆に設計側からも、「希望の○○cmを取ろうとすると間取りの納まりが悪くなる、あと20cm縮めてはだめか」など具体的な相談もしやすくなります。
家づくりで後悔しないために、まず片付け
「片付け」と聞くと地味で面倒に思えますが、これは 家づくりに直結する投資行動 です。
物の量を把握することで、
- 間取りが無駄なくスッキリ
- 建築費用をおさえられる
- 引っ越し後の暮らしが快適
という効果が
家を買う前に、まずは片付けから!
それが、『本当に賢い家づくり』の始めの一歩なのです。
もう家を買ってしまった人へ
家を買ってしまった後でも、決して遅くありません。
確かに、購入前に片づけをしていれば、場合によっては数十万円〜数百万円の差につながったかもしれません。
でも、既に買ってしまったからといって嘆く必要はないのです。むしろこれからは 「余計なモノを買い続けない」ことで未来の出費を減らせる のですから。
かくいう私も、家を買う前に片づけができていたかというと…まったく出来ませんでした。
あほなくらい仕事優先にしてしまって、気づいたらモノを整理出来ないまま家を購入。今となっては「せめて引っ越し前に片付け休暇(有給)を取れば良かった」と後悔ばかりです。だからこそ、自分の失敗を元にここでこうしてお勧めしています。
ちなみに、建築士ってみんながみんなインスタに出てくるような、すっきり片付いた凝ったインテリアの素敵なお家で暮らしていると思っていませんか?
…そんなそんな、それは大きな勘違いです。建築士だって十人十色なのですよ。
我が家は…、平均的なお家よりは物が少なくすっきりしている方ですけれどね
話は戻って、つまり、すでに家を購入してしまった人は、払ってしまった分を取り戻すのではなく、これから先の暮らしでどうプラスを積み重ねていくか を考えれば良いということ。精査して手元に残った物たちは、きっと暮らしを心地よくしてくれるはずです。
さて、今年も、恒例となりつつある「年末に向けた片付け祭り」を10月下旬から始めようと思っています。
もしこの記事を読んで「自分も片づけようかな」と思った方は、ぜひ一緒にチャレンジしてみませんか?
次回予告:片付けの始め方
次回は、実際に家づくり前に取り組むべき片付け計画についてご紹介します。

